参考;時事通信 5月13日(水)11時33分配信

たそがれる護憲=社民弱体化で失速【戦後70年】

参考:時事通信 5月13日(水)11時33分配信

たそがれる護憲=社民弱体化で失速【戦後70年】

衆院本会議で「自衛隊合憲」を表明する村山富市首相(当時)=1994年7月20日

国会で護憲勢力の衰退が著しい。かつて護憲派の代表格として一時代を築いた旧社会党が分裂、その中核を継承した社民党が弱体化し、じり貧傾向から抜け出せないことが大きな要因だ。戦争放棄をうたう憲法9条の改正を目指す自民党を筆頭に、改憲志向の政党が国会で勢力を増す一方で、護憲派の出番は見えてこない。(敬称略)
◇転換点
「十分な議論や国民の理解を得ることなく政策転換し、社民党の議席を減らすことになった」。党首・吉田忠智は、党が低迷する大きなきっかけをつくったのは、前身の社会党委員長・村山富市が首相当時の1994年に打ち出した「自衛隊合憲」だったと振り返る。
自民党が長期政権を築いた「55年体制」の下で防衛力整備を進める中、社会党は「反安保・自衛隊違憲論」を基本政策に据えて平和路線を堅持、野党第1党の地位を占めていた。だが、自民党などと連立政権を組んだ村山は従来路線を大きく転換。党内外に衝撃が広がった。
首相に就任して陸海空3自衛隊の最高指揮官となった村山には、安全保障政策で現実路線に踏み出さざるを得ないとの考えが強かった。同時に、党が硬直的とも指摘された安保政策から脱却し、「万年野党」から「責任政党」に生まれ変わることへの期待もあった。
だが、村山の真意は十分には理解されなかった。「社会党はもう護憲政党ではない」。社会党を支援してきた市民団体や地方組織からは、不満や失望の声が噴出。当時、大分県職員労組書記長だった吉田も、同郷の村山を支えていたことから、労組の会合で激しい批判にさらされた。
社会党が94年秋の臨時党大会で村山の路線転換を追認すると、所属議員が反発して離党、新党を結成するなどの動きが相次いだ。有権者の離反も加速し、「社民党」に党名を変更して臨んだ96年の衆院選では、前回93年の70議席から15議席に激減した。
さらに2005年衆院選では、党の精神的支柱として「平和・護憲」を訴え続けてきた土井たか子が比例代表で落選。党の落日を決定付けた。
◇原点回帰
「『憲法9条は変えない』と言う政党が国会からなくなったら困る」。危機感を抱き、弁護士から参院議員に転じた福島瑞穂。土井の後を継いで党首に就いた福島は06年、自衛隊を「現状、明らかに違憲状態にある」と明記した「社民党宣言」を打ち出し、党の「原点回帰」を鮮明にした。
福島は「平和や自衛隊に対する立ち位置をもう一回はっきり言った方が良いと思った」と説明する。だが、基本政策が大きく揺れた社民党の支持は伸び悩む。背水の陣で臨んだ13年参院選は過去最低の1議席で、福島は党首の座を降りた。
昨年5月の大型連休。福島辞任を受け党首となった吉田は、大分市の大分赤十字病院に入院中の村山を訪ねた。高齢の村山は政界引退後、体調を崩すと、自宅にほど近い同病院の個室で静養する。党立て直しへの助言を求めた吉田に対し、村山が口にしたのは、自らの決断を党の発展につなげられなかった後輩への不満だった。「せっかく(自分が)首相になったのに。首相であることを社会党はその後にもっと生かしてほしかった」。
社民党は今、衆院2議席、参院3議席の小所帯にしぼんだ。吉田は、労働団体や市民団体との連携に活路を見いだそうとしている。ただ、「団体が活動に政党色が付くのを避ける傾向にある」とも感じる。手詰まり感は否めない。
◇躍進にも限界
「斜陽」の社民党とは対照的に、同じ護憲勢力として徐々に盛り返しつつあるのが共産党。昨年の衆院選に続いて、先の統一地方選前半戦でも議席を大幅に伸ばした。国対委員長・穀田恵二は4月15日の記者会見で、社民党との違いについて「明確な旗印を掲げ、ぶれずに戦ってきたことが一番大きい」と胸を張った。
もっとも、共産党の「躍進」は、「民主党に向かうはずの政権批判票が流れたため」とみる向きもあり、どこまで持続するかは見通せない。議席も衆院21、参院11にすぎず、護憲勢力としては社民党と合わせても少数派。自民党や維新の党に「加憲」を唱える公明党などを加えた改憲志向の勢力との数の開きは埋めようもない。自民党は来年夏の参院選後の改憲発議も視野に入れており、今後、国会で改憲論議が本格化すれば、共産、社民両党は「蚊帳の外」に置かれかねない状況だ。
4月3日、東京都調布市。護憲派の市民団体「9条の会」の呼び掛け人を務めた憲法研究者、故・奥平康弘の「志を受けつぐ会」が開かれた。約900人の出席者は、9条堅持を訴え続けていくことを確認。賛同する動きが全国にあるのは確かだ。
こうした活動に支えられているはずの共社が、国会で改憲勢力の拡大を止められない現状は何を意味するのか。護憲派の草の根の運動が先細っているのか、それとも政党が受け皿になり切れていないのか、判然としない。

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記事がしっかりしている。参考になりすぎた。当論説委員メンバー

 

最終更新:5月13日(水)16時14分